饅頭 (中国)

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饅頭
蒲鉾型のマントウ(手前と奥のものは包子)
繁体字 饅頭
簡体字 馒头
発音記号
標準中国語
漢語拼音mántóu
粤語
粤拼maan4 tau4
閩南語
閩南語白話字bán-thô
揚げたマントウと加糖練乳

饅頭(マントウ 繁体字: 饅頭; 簡体字: 馒头; 拼音: mántou; ウェード式: man²tou満州語:mentu)は小麦粉酵母を加えて発酵させた後、蒸して作る中国パン。日本の饅頭のルーツとも言われている。

定義と名称[編集]

中国の饅頭は蒸しパンでありながら、デザートではなく、中国の華北に住んでいる人の「主食」として食べられている。

中国語の饅頭という言葉は、元々日本と同じ「蒸しパン全般」のことを指していたが、現在の中国では特に「餡や具の無い蒸しパン」を指す。餡や具のあるもの、日本で中華まんと呼ばれているものは「包子」と呼ばれる。また、生地を発酵させず、具も入れないまま丸めて蒸しあげたものは窩頭中国語版英語版(ウォートウ)と呼ばれている。

概要[編集]

小麦粉を使った伝統的な食品で、一般に直径4cmから15cm程度の半球形または、6~7cmの短い蒲鉾型をしている。歴史的には、中に餡や具が入っていたが、現在は中には何も入っていないのが普通で、これに対して中に餡や具が入っているものは包子(パオズ、拼音: bāozi)、塩で味付けされたものは花卷と呼ばれるようになり、区別される。

華北東北地方一帯は寒冷地で降水量がそれほど多くないため、の栽培に適していないが、小麦の栽培には適しているため、伝統的に麺類またはマントウが主食として食べられる。上海香港など、華中・華南で出されるマントウは、上記のものより小さく、主食ではなく軽食(点心)として食べられる。

日本で中国のマントウに似た食品としては、近代以後に包子を基に発展普及した中華まんの他、長崎市卓袱料理の一品や、愛媛県松山市の「労研饅頭」(ろうけんまんとう)などが挙げられる。群馬県の焼きまんじゅうはマントウとは直接的な関係はないが、餡の入っていない酒饅頭(餡入りもある)を用いる事から部分的に先祖返りしたものともいえる。

名称[編集]

地域によっては「繁体字: 饃饃; 簡体字: 馍馍」、モーモー mómó ドンガン語:мәмә、ウイグル語: манта‎)または「繁体字: ; 簡体字: 」と呼ぶ。陝西省甘粛省などの地域や、キルギスドンガン人は、小麦粉をこねて加熱したパン様の食品を広くこう呼んでおり、焼いたものも含む。新疆ウイグル自治区青海省山西省山東省江西省湖南省福建省などでは具のないものを指す。内モンゴル自治区では具入りの包子も含めた総称である。西安でも総称であるが、単に「饃饃」というと焼餅(シャオビン)を指すことが多く、蒸したマントウは「繁体字: 蒸饃; 簡体字: 蒸馍」(ジョンモー)と呼び分ける。なお、チベット料理モモは具入りのものが多い。

他に、浙江省温州では「実心包」(繁体字: 實心包; 簡体字: 实心包)、江蘇省蘇州では「大包子饅頭」(繁体字: 大包子饅頭; 簡体字: 大包子馒头)と呼ぶなど「包」を含む呼び方をする地域もある。

ベトナム朝鮮半島にも「マントウ(饅頭)」という言葉がある。また、モンゴル語ペルシア語でもマントウから派生した言葉が使われている。

アメリカ合衆国のベトナム風サンドイッチ店Lee's Sandwichesには「Deli Manjoo(デリ・マンジュー)」という名称の、今川焼きに似た菓子(カスタードクリーム入り)があるが、それは韓国系のペイストリー会社が提供しているものである[1]

起源説話[編集]

3世紀中国三国時代の宰相・諸葛亮が、南征の帰途に、川の氾濫を沈めるための人身御供として生きた人間の首を切り落として川に沈めるという風習を改めさせようと思い、小麦粉で練った皮に羊や豚のを詰めて、それを人間の頭に見立てて川に投げ込んだところ、川の氾濫が静まったという。これが饅頭の起源とされている。この説は次の書に記述される。

  • 北宋時代の『事物紀原』
裨官小説云 諸葛武侯之征孟獲 人曰蠻地多邪術 須禱於神 假陰兵一以助之 然蠻俗必殺人 以其首祭之神 則嚮之爲出兵也 武侯不從 因雜用羊豕之肉 而包之以麪 象人頭以祠神 亦嚮焉 而爲出兵 後人由此爲饅頭 至晋盧誰祭法 春祠用饅頭 始列於祭祀之品 而束晳餅賦亦有其説 則饅頭疑自武侯始也 — 『事物紀原』卷九の酒醴飲食部四十六[2]
  • 『七類修稿』
蠻地以人頭祭神 諸葛之征孟獲 命以面包肉為人頭以祭 謂之蠻頭 今訛而為饅頭也 古人寒食採桐楊葉染飯青色以祭 資陽氣也 今變而為青白團子 乃此義耳。 — 『七類修稿』卷四十三の事物類[3]

『事物紀原』などの説が後の代に書かれた説話三国志演義』に収録され広く知られるようになったため、その内容を解説されることが多い。『七類修稿』では中華思想で南方の異民族を南蛮と呼ぶので、蛮人の頭を意味する「蛮頭」(繁体字: 蠻頭; 簡体字: 蛮头; 拼音: mán tóu)が語源であるとする。『因話録』では「神をだまし、本物の頭だと信じ込ませる」ことから「瞞頭」(繁体字: 瞞頭; 簡体字: 瞒头; 拼音: mán tóu、発音は同じマントウ)と最初呼ばれたという。その後、饅頭を川に投げ入れるのがもったいないので祭壇に祭った後で食べるようになり、当初は頭の形を模して大きかった饅頭が段々小さくなっていったと言われている。

変種[編集]

マントウを油で揚げ、ジャー・マントウ(繁体字: 炸饅頭; 簡体字: 炸馒头; 拼音: zhá mántou; ウェード式: zha²man²tou)として食べることもある。レストランで頼むと加糖練乳が調味用についてくる。小振りの蒲鉾型のものを揚げることが多い。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Lee's Coffee Goes International(2008年8月8日付のPR Newswireより転載) Lee's Sandwiches Franchise 公式サイト
  2. ^ 事物紀原 第819頁”. 2016年8月7日閲覧。
  3. ^ ウィキソース出典 郎瑛 (中国語), 七修類稿/卷43, ウィキソースより閲覧。 
  4. ^ ウィキソース出典 趙璘 (中国語), 因話錄, ウィキソースより閲覧。 
  5. ^ 方王媽媽堅果饅頭製作”. 2010年8月4日閲覧。

関連項目[編集]